太極拳の学び方
●初心者の方へ
まずは真似ることから始まります。
お手本となる動きをコピーするのがスタートです。
そして、ここが最初の関門でもあります。
目を凝らして先生の動きを追いかけても、
自分の身体でそれを再現することが何故かできないのです。
なぜかというと、手足それぞれへの、力の配分がコントロールできない限り、
ゆっくりとした太極拳の動きは表現できないものなのです。
けれども、できない自分を恥じたり、貶めたりするのではなく、
その理論やコツを探す、調べる、質問するのが、学びです。
型のポーズや順番を覚えることは、学びではありません。
太極の門をくぐる一歩は、ここからはじまりますよ。
●中級者の方へ
まず最初に言えるのは、太極拳は「自由」です。
太極拳は、何ものにもとらわれない、自分だけの時間と空間を与えてくれます。
すべてが、自発的なものでないと楽しむのは難しくなります。
誰かの為に行うものではありません。
受け身の心は不自由ですね。
陳式太極拳十八世の馮志強老師の言葉に、「太極拳とは積極的な休息である。鍛錬を通して静と動の運動が、中枢神経から内臓機能までを調整し、陰陽のバランスを保つものとなる。」とあります。ソファでごろごろとスマホを触るのも休息なら、太極拳を行うのも同じ休息であるというのです。
ここに本質があります。
人体を構成する物質が「水・タンパク質・脂質」だとすると、
太極拳を構成するものは「精・気・神」となる。
「精・気・神」の概念がないものは、もはや太極拳ではないでしょう。
太極拳を学ぶという事は、「精・気・神」を学び手にするという事になります。
頭で考えず、心で考える。脳の発する電気信号ではなく、胸の奥にある魂で感じ取る。
学ぶのは、型や順番ではなく、自己を知る為のアプローチの方法を学ぶこと。
とはいえ、眉間にシワをよせて、修行僧のようにストイックに行うのではなく、
ごはんを食べるように、歯を磨くように、ほんの少しの集中で
毎日毎日、欠かすことなく、ダラダラと行うことが、
一番の近道となるから、なんともおもしろいのです。
努力・才能・根性…、いらないと思います。好きになればいいだけです。
太極拳をスポーツ・体操の枠に収めるには無理が有り過ぎます。
養生・医療、思想、武術、芸術が一体化した自己表現の営み。
「身体で思考する哲学」。Philosophy of the Body!
天に三宝あり「日、月、星」
地に三宝あり「水、火、風」
人に三宝あり「精、気、神」