
思えば、武における師には恵まれた人生である。
己の才の低さは言うに及ばず、不肖の弟子との自負ありきだが、
とにかく出会いには恵まれてきたと思える。
その中のおひとり、
青年期に教えを請うた師範。
残念ながら少し前に
鬼籍に移られた。
己が何者なのかも判らぬ、
社会に出て数年の、
コチコチで青臭い
ハッタリだらけの若造だった私に、
武の技とその理合いを通して、
処世の道を歩く杖を
授けていただいた。
短い期間の縁であったが、
師との出会いがもたらした知見は、
今につながる大きな支えだ。
正座して対面し、禅問答のように
ナイフの切っ先の受け方を
諭された時の驚きと感嘆は
いまだ鮮やかに心に残る。
一度だけ褒められたこともあった。
相手の振り下ろす剣に対し
入り身になりつつ
切り上げる剣の軌道を認めてくださった。
これもまた鮮やかに心に残る想い出だ。
ギロリと見つめる目の迫力、とても怖い師だったが、
嘘のない人であった。
そんな師の語る、
大人といわれるための
条件を八つ。
●相手の立場がわかるか?
●他人の負担になっている部分に敏感であるか?
●自前の判断が出来るか?
●ものごとの“ほど”がわかるか?
●自分の国を愛することができるか?
●弱者をいたわることができるか?
●結果に責任が負えるか?
●批判に関して寛容であるか?
改めて、
己に問うてみるが…、
ただ赤面するのみだ…。