推手と皮膚

套路(型のこと)と推手は、太極拳を学ぶ上での両輪とよくいわれます。
けれども実際のところは、推手は敬遠されがちの練習方法ですね。

日頃お教室で、優雅に踊っているベテランの御婦人方や
生真面目で理論好きなオジサマ方が、
昇段試験の項目に推手が入っているので、
とりあえず真似事だけでもやっておかなくちゃ…
というのが現状。

これとは逆に、武道スポーツである
「剣道」「柔道」「空手道」などは、昇段試験の項目の
優雅?な「型」はおざなりで、
地稽古や乱取り・組手が練習の中心となりますね。

推手とは、
勝ち負けに一喜一憂する性質のものではなく、
コミュニケーションの一つの手段です。
トランプや将棋を行うようなもので、
闘志や激しさを否定する運動です。
相手を飛ばして喜んでいるのは下の下ですね。

日常生活・社会生活の中で、
家族や親しい者以外の誰かと、触れる・接触する機会はほとんどありません。
誰かを押したり、押されたりすることもありません。
「目は口ほどに物を言う」とありますが、
「身体もまた口ほどに物を言う」ものです。
推手練習によって、相手の無言の意思を知ることができ、
自分の意思を伝えることができます。
押された人はどう感じるのか、
身体はどう反応するのか?
どの程度の力で押せば安全か危険か?
頭でなく身体で思考していることに
気が付くはずです。

とはいえ、
推手ばかりに特化すると視野がせまくなり、
お山の大将になりかねません。
套路があってこその太極拳であり、
套路がなかったら相撲や柔道のできそこないにしかなりません。

バランスを身につけましょう。

高齢者のためだけの太極拳では、先細りしていつか消滅してしまう。
そうならないようにとサラリーマン稼業のかたわらで教室運営を
行ってきましたが、
いつしか自分自身が高齢者の入口に立っております。

願わくば、太極拳愛好者のみなさま、
バランスを身に着けて、
太極拳という文化を
大切に後世に残すことを考えましょうや。

GORO について

太極拳に惹かれ、早や四十年。踊りでもなく、組織の下請けでもなく、ただのあたりまえの太極拳を、日々稽古しております。スポーツもどきの普及に懸念をいだきます。本来は、華道や茶道という、自分にベクトルが向かう種類の文化と思います。賛同者は非常に少ないのがさみしい(笑)
カテゴリー: 陰陽 パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です